年末調整はペーパーレス化で業務効率アップ!進め方や注意点を解説
「年末調整の業務負担が大きい」
「従業員から年末調整の申告書を集めるのが大変」
「年末調整をペーパーレス化するメリットって何?」
こんな悩みや疑問を抱えている人には、この記事が参考になるでしょう。
年末調整とは、企業が従業員一人あたりの年間所得税額を計算し、過不足があれば調整するための手続きです。12月31日時点で企業に勤めている従業員は、雇用形態を問わず年末調整の対象となります。
けれども年末調整を紙ベースで行うと、業務負担が大きくなってしまいます。それを解消するために、近年進んでいるのが年末調整のペーパーレス化。本記事では、年末調整をペーパーレス化するメリットやその方法、注意点を解説していきます。
書類の回収・催促・保管に追われる年末調整業務。完全な電子化が難しい企業でも、紙の郵便物をそのまま電子化する方法があります。
紙ベースの年末調整には課題が多い
毎月企業から従業員へ振り込まれる給与は、すでに所得税を差し引いた金額です。ところがこの所得税額は概算であり、従業員それぞれの扶養や保険加入等の状況を加味した金額ではありません。それゆえ税金を払い過ぎる人や、税金を納付しきれない人が出てきてしまいます。
この差額を解消するために行われるのが、年末調整です。年末調整は以下の流れで進みます。
(11月)従業員が申告書類を記入し、企業に提出する
(12月)企業が正しい納税額を計算し、差額の還付や追加徴収を行う
(翌年1月)企業が法定調書を作成し、税務署や自治体へ提出する
従来、年末調整は紙ベースで行われていました。ただしそこには、3つの課題があります。
従業員とのやり取りが大変
年末調整では、従業員それぞれが家族構成や保険加入状況等を記入します。人によって書く内容が異なるため、「何をどこに書けばいいのか」「自分はこの書類を出すべきか」など、さまざまな問い合わせも増えるでしょう。何度も同じ説明をすることになり、担当者が不満を感じるケースも少なくありません。
また締切までに提出してくれない、催促しても応答がない、修正対応が遅いといった問題も起こりがちです。特に従業員数が多い企業や、パートやアルバイトが多い企業は、全従業員へまとめて連絡をするのが難しいですよね。こうしたやり取りの大変さが、大きな課題の一つといえます。
記入ミスや計算ミスが多い
年末調整で使われる用語は聞き慣れないこともあり、よくわからないまま記入する従業員もいるかもしれません。これが記入ミスの増加、ならびに確認・修正にかかる手間の増加につながります。記入内容が合っていても、字が読みづらいことで誤読が起きるケースもあります。
さらに担当者は、受け取った書類を基に控除額を計算しなければなりません。従業員によって給与額も所得控除額も異なるため、一つひとつ手計算していると時間も手間もかかります。これが計算ミスの増加要因となっており、こうしたミスの多さも紙ベースゆえの課題です。
担当者の業務量が多い
年末調整の担当者は、従業員一人ひとりの書類確認や精算対応をするほか、税務署や自治体への報告書類も作成しなければなりません。提出期限は翌年の1月31日までと決まっているので、それまでに書類の作成・提出を済ませる必要があります。
さらに部署によっては、年末調整と併行して通常業務も行われます。一時的に業務量が多くなるため、担当者の負担も大きくなってしまうでしょう。
年末調整のペーパーレス化とは
近年よく聞かれる「ペーパーレス化」とは、紙ベースの書類を電子データに置き換える取り組みのこと。書類の電子化、デジタル化といわれることもあります。社内文書や請求書をデジタル化する、FAXではなく電子メールを使うなど、社内のあちこちでペーパーレス化が進んでいる企業も多いのではないでしょうか。
そして国税庁は、年末調整のペーパーレス化を推進しています。年末調整をペーパーレス化することで、紙ベースの課題であったヒューマンエラーや業務負担の改善が期待できます。
電子化できる申請書類はさまざま
国税庁によると、年末調整手続きの電子化が可能な書類には以下があります。
給与所得者の扶養控除等申告書
給与所得者の配偶者控除等申告書
給与所得者の保険料控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書
基礎控除申告書 など
このほか保険料控除証明書や個人年金保険料など、控除証明書等関係も電子化が可能。さらに所得税額の計算後に税務署へ提出する法定調書も、e-Taxやクラウドサービス等を用いた作成・提出が認められています。つまりシステムさえ整えれば、一連の手続きをまとめてペーパーレス化できるのです。
参考:年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)|国税庁
年末調整をペーパーレス化するメリット
年末調整に限らず、企業がペーパーレス化を進めるメリットは3つ挙げられます。
業務効率化が進む
ヒューマンエラーが減る
コスト削減が進む
ここでは年末調整をペーパーレス化することで、具体的にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
業務効率化が進む
年末調整のペーパーレス化による企業側のメリットは、年末調整申告書の配布や回収、保管といった手作業がなくなること。業務工程が減るため、効率よく年末調整を進められます。リアルタイムで提出状況を把握できるシステムも多いので、スムーズな対応ができる点もペーパーレス化のメリットです。
また従業員にとっても、紙に記入するよりデータを入力するほうが、効率よく書類を作成できます。初年度は多少時間がかかるかもしれませんが、前年のデータを引き継げるシステムを使うことで、翌年以降はスピーディーな書類作成が可能ですよ。
このように年末調整をペーパーレス化することで、企業・従業員どちらにとっても業務効率化が進みます。
ヒューマンエラーが減る
従業員がシステム上で年末調整申告書を作成する場合、入力ミスがあるとアラートが表示されます。すると従業員自身がその場で修正できるため、正確性の高い状態で提出できるでしょう。提出されたデータが自動で反映されるシステムなら、担当者による誤読や転記ミスも減らせます。
さらに申告書と控除証明書のデータが揃っていれば、厄介な控除額の計算が自動で行われるのも大きなメリット。計算ミスをなくし、速く正確に精算を済ませられます。
コスト削減が進む
紙ベースで年末調整を行う場合、年末調整申告書等の印刷代や郵送費、封筒などの備品費や預かった書類の保管費用など、さまざまなコストがかかります。一つひとつはささいな額でも、従業員数が増えるとかかるコストも増すでしょう。担当者の業務量が増えて勤務時間が延びるため、人件費もかさみます。
その点ペーパーレス化が進めば、こうしたコストの削減が可能です。ただし選ぶシステムによっては利用料金が発生するため、不安な人は一度試算してみるとよいですね。
年末調整をペーパーレス化する方法
年末調整をペーパーレス化するには、適切なシステムを導入する必要があります。民間企業が提供しているクラウド型の年末調整システムを使っても良いですし、国税庁が提供している年末調整控除申告書作成用ソフトウェアを使っても良いでしょう。
ここでは、それぞれの特徴や導入方法をご紹介します。
①年末調整システム
引用:オフィスステーション 年末調整 | 顧客満足度No.1の人事労務クラウドソフト
民間企業の年末調整システムは、特徴によっていくつかのタイプに分かれます。
年末調整特化型:オフィスステーション年末調整、S-PAYCIAL with電子年調申告 など
労務管理との一体型:SmartHR、freee人事労務 など
給与計算との一体型:弥生給与Next、ジンジャー給与 など
多くの年末調整システムがクラウド型なので、導入しやすいのが魅力。システムによって機能が異なり、なかには機能の拡張やカスタマイズができるものもあります。
さらに給与システムや労務管理システムと連携できれば、年末調整だけでなくバックオフィス業務全体の効率化も可能。求める機能や予算に応じて、企業に合ったシステムを選びましょう。
②年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)
引用:令和7年分 年末調整控除申告書作成用ソフトウェアアプリ - App Store
国税庁の年末調整控除申告書作成用ソフトウェアは、ホームページやApp Store、Google Play Storeなどからダウンロードし、スマホやパソコンにインストールして利用します。主な機能は控除申告書の作成や、マイナポータルとの連携。作成した申告書は電子データとして、あるいは印刷して企業へ提出します。
年調ソフトは無料でダウンロードできるうえ、利用料金もかかりません。そのためコストを抑えつつ、ペーパーレス化を進めたい人にもおすすめです。使い方の解説動画や操作マニュアルを確認しておけば、初めての人も安心して利用できます。
年末調整をペーパーレス化する際の注意点
年末調整をペーパーレス化するメリットは多いものの、これまでの業務フローを大きく変えることになります。そのため十分な準備がないままペーパーレス化を進めてしまうと、うまくいかず、反対に手間を増やすことにもなりかねません。
そこでここでは、ペーパーレス化を進める際の注意点を3点お伝えします。メリットだけではなく、リスクもきちんと知っておきましょう。
あらかじめ従業員への案内をしておく
これまで紙ベースで年末調整をしてきた従業員にとって、新システムの導入は大きな変化です。混乱を最小限に抑えるためには、事前の案内や情報共有が重要。たとえば以下の準備をしておきます。
ペーパーレス化する目的を説明する
システムの操作マニュアルを配布する
相談や問い合わせ用のサポート体制を整える
従業員に事前準備を依頼する
従業員側の事前準備としては、保険会社から控除証明書の電子データを受け取っておくことや、必要に応じてシステムをインストールしておくことが挙げられます。初年度は問い合わせが多くなるため、マニュアルを配布するだけでなくサポート体制も整えておきましょう。
セキュリティリスクを管理する
電子データをやり取りする際に注意すべきは、セキュリティリスクです。特に年末調整書類には、氏名や住所、家族状況や給与額といった個人情報が満載。万が一情報漏洩やデータの改ざんが起これば、大問題になってしまいます。
こうしたリスクを回避するためにも、以下のような対策をとることが大切です。
データを暗号化する
ISO認証を受けたシステムを利用する
ウイルス対策ソフトを導入する
アクセス権限を適切に管理する など
可能であれば事前に社内説明会を開き、システムの運用方法について共有しておくと安心です。
電子帳簿保存法に則って保存する
2022年に大幅改定された電子帳簿保存法では、国税関係書類の電子保管について詳しく定められています。データで受け取った年末調整書類は、基本的に電子帳簿保存法の要件を満たす形で保管しなければなりません。
たとえば以下の点に留意しましょう。
電子化された書類は電子データのまま保管する
真実性を確保する(データの改ざんができないようにしておく)
可視性を確保する(データを日付等で検索できるようにしておく)
なお書類の保存期間は、7年間となっています。
ペーパーレス化を進めるにはクラウド私書箱「メールメイト」
年末調整のペーパーレス化にあたって、国税庁は3つの案を挙げています。
最もメリットが大きいのは、案1の完全電子化です。ただシステム環境や従業員のITリテラシー、コストなどの要因で、実現できない企業もあるでしょう。
かといって紙ベースでのやり取りが残ってしまうと、書類の郵送や受け取りの手間がかかりますし、保管場所の確保も必要。思うように業務効率化が進みません。
案2・案3のような部分電子化の場合、あるいは電子申告と紙申告が混在する企業の場合は、どうしても紙ベースでのやり取りが残ります。そんな企業には、紙の郵便物を電子化するクラウド私書箱・メールメイトがおすすめです。
紙で送られてきた書類も電子化できる
メールメイトは、紙の郵便物をデータ化してクラウド上で管理するツールです。もし企業が年末調整を部分電子化した場合、控除申告書や控除証明書は郵送で受け取ることになります。そのため書類を保管する手間がかかりますし、データの入力や検索にも時間がかかるでしょう。
そこでメールメイトを使えば、郵便物はスキャンされ、電子データとして届きます。書類の保管がしやすくなるうえ、検索や共有も簡単。パソコン上で処理が完結するため、業務効率化にもつながります。
ファイルのアップロードも可能なので、手元にある書類をデータ化して一元管理することもできます。電子データと紙が混在している企業にとって、大きなメリットですよね。
電子帳簿保存法にも対応しているので安心
年末調整に必要な書類は、電子帳簿保存法に則って保存しなければなりません。その点メールメイトは保存要件を満たしているため、安心して利用できるでしょう。スキャナ保存も可能なので、紙文書の電子化にも役立ちます。
さらにPマーク認定の取得や二要素認証、データの暗号化など、セキュリティ対策も整っています。利便性と安全性を備えたツールといえます。
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年末調整 ペーパーレスに関するQ&A
最後に、年末調整のペーパーレス化に関してよくある質問に回答します。
Q1)年末調整のペーパーレス化は企業の義務?
近年の日本ではペーパーレス化が推進されており、2024年の1月からは電子取引データのデータ保存が義務化されました。これによってデータで受け取った書類は、必ず電子データのまま保存することとなったのです。
ただし年末調整については、2025年12月時点で企業に年末調整の電子化義務はありません。とはいえ2020年から国税庁が電子化を推進しているため、これから義務化の流れが進む可能性はあるでしょう。
法定調書はペーパーレス化の義務があるので注意
企業が税務署に提出する法定調書については、条件によってe-Taxか光ディスク等による提出が義務付けられています。ペーパーレス化の対象となる条件は、以下のとおりです。
2021年~:前々年に提出義務のあった法定調書が1種類に付き100枚以上ある企業
2027年~:前々年に提出義務のあった法定調書が1種類に付き30枚以上ある企業
つまり2025年に提出する給与所得の源泉徴収票が30枚以上あった企業は、2027年の法定調書をe-Taxや光ディスクで提出しなければなりません。準備を整えておきましょう。
参考:法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
Q2)年末調整システムと年調ソフトのどちらを使うべき?
クラウド型の年末調整システムは、機能が豊富で使いやすいのがメリットです。外部システムとの連携もしやすく、大幅な業務効率化も期待できます。
一方で利用料金がかかるため、費用対効果のバランスを考えて選ばなければなりません。また種類が豊富な分、企業に合ったシステムを選ぶのが大変です。
それに対して年調ソフトには、導入コストがかからない、スマホでもパソコンでもインストールできるというメリットがあります。ただし利用できる機能は限られており、疑問点が出てきても自分で調べて解決する必要があります。
まとめると、コストを抑えたい企業や小規模企業には年調ソフトが、それ以外の企業には年末調整システムがおすすめです。
Q3)マイナンバーカードがなくても電子申告はできる?
マイナンバーカードがなくても、年末調整の電子申告は可能です。けれどもマイナンバーカードがないとデータ連携ができず、各種申告書の入力に時間がかかってしまいます。
マイナンバーカードを持っている従業員は、マイナポータル連携を利用して控除証明書等のデータ取得ができます。取得したデータは控除申告書に自動入力できるため、スピーディーに作成・提出が進みます。
マイナンバーカードがないと、自分で保険会社等から控除証明書を取得し、その情報を控除申告書に入力しなければなりません。つまりマイナンバーカードがなくても電子申告はできますが、効率化にはつながりにくいでしょう。
年末調整をペーパーレス化して負担を軽減しよう
本記事では年末調整業務の課題を抱えている人向けに、年末調整のペーパーレス化を進める方法やメリット、注意点を解説しました。年末調整にまつわる業務を効率化するには、ペーパーレス化が有効です。将来的に義務化される可能性もあるので、今からシステムを活用してペーパーレス化を進めておくのもよいでしょう。
ただ企業の状況によっては、すぐに紙の書類から脱却することは難しいかもしれません。そんな時におすすめなのが、クラウド私書箱・メールメイト。紙の郵便物もデータ化してクラウド上で管理できるため、年末調整のペーパーレス化につながります。電子帳簿保存法対応なので、安心して使えますよ。
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